2016/06/28

ラテン語

17世紀のヨーロッパでは中流以上の家庭の男の子は今の小学生くらいの年からラテン語を教わっていたらしい。ラテン語を習得すれば、それが俗語化したり、その影響を強く受けたりした言語の習得は容易になるからという理屈だった。マーク・トウェインは1836年生まれだが、その時代の米国中西部でも、上の学校に進む予定の男の子はラテン語を習っていた。18世紀にベンジャミンフランクリンは、これは無意味な風習であり、大抵の子供は難しすぎるラテン語で挫折し、結局なんの役にも立たないと言っている。

私の出た大学の学科では週一×一年間だがラテン語の授業があった。もっと上の学年であった蹄鉄実習ほどじゃないが時代遅れでほぼ無意味な科目だった。担当の教師もわかっているので薄いハードカバーの教科書は適当にして、グレゴリオ聖歌や中世ドイツの学生歌などを教えて歌わせたりした。

私は既にスペイン語を独習していたのでラテン語の初歩ではごく有利であり、ある時教科書もプリントも忘れてきて机に何も置いてなかったが、教師に「君は何も持っていないのに何でも知っているねえ」と言われたりした (教室爆笑)。教科書中ほどの動詞の活用まで授業が進めばますます調子こけただろうが、そこまで進まずに終わりになった。

読む人が読めば何学科かわかるだろうが、こんな科目は今でもあるのだろうか?

2016/06/17

ジャンクフード

近所のスーパーで犬用おやつとして売っているのは例外なくジャンクフードに類するものばかりだ。

だいたいは鷄の屑肉、例えば鷄ガラに高圧ウォータージェットを当てて落とした肉切れみたいなものやファストフード企業の基準にも引っかかるような古い肉などを挽いて結着材料や軟化剤を混ぜて成形し、着色料や犬の食欲をそそる何か魔法のような合成香料を吹き付けてある。たいていジャーキーと名付けて売っている。ペット用品店ではもう少し良いものも売っているが、自分の犬に長生きして欲しいと願う飼い主が買いたいと思うようなものは一部でしかない。

犬を飼っていないが慰みに公園などでよその犬におやつを与えて喜ばせたい人はたいてい、そういう「ジャーキー」を用意してくる。魔法の香料のおかげで犬どもは自家製の上質なおやつや鶏獣肉・臓器の素干しやフリーズドライのような高価なおやつよりもそういうジャンクを食べたがる。与える方は相手の犬が太り過ぎていようが気にかけない。しかも量が多い。断るのに、あるいは最少限度にしてもらうのに苦労する。訳を話して「お金を出して感謝されないどころか敬遠されるのは馬鹿馬鹿しいでしょう、どうかやめて下さい」と言ってみたい。

飼い主の一部にもそういうジャンクを自分の犬に与える人がいる。知り合いの犬に箱みたいに太った柴犬がいるが、飼い主は避妊手術のせいで太るのだと言っている。確かにそういう犬もいるだろうが、その人が他人の犬に物凄い勢いで「ジャーキー」を与えるところを見たことがあるから全然信用できない。

2016/06/12

「柴系雑種」

辺鄙な地方や避暑地や島嶼部では放し飼いの犬が多く、野犬の群れもいる。当局は数を抑えるために野犬の特に仔犬を箱罠などで捕らえる。成犬はそういう手段ではなかなか捕まらない。狂犬病が国内に入ったとき野犬が多いと危険なためだが、現状では犬の自然繁殖に対し後手後手であり、ほとんど無駄な努力じゃないかと思う。ともかく篤志家たちはそれを引き取っては都会に連れてきて里親探しをする。

そういう犬たちには「柴系雑種」と呼ばれるタイプが多い。彼らはほぼ立ち耳巻尾で、しかし耳は大きめで巻きは緩め、毛色は柴犬より薄い茶色が多い。薄いというか一本のトップコートの毛に白から漆黒までのグラデーションを持つことの多い和犬の毛に比べて色味に乏しい。和犬も狼に比べれば乏しいが。和犬のことを知らない人たちは彼らも柴犬だと思っていることが多い。ときどき白や白茶斑や少ないがブラック&タンもいる。そして柴犬より幾分大柄で脚がすらっとしていて眼はほとんど洋犬の眼をしている。奥眼と短めの脚は柴犬が低山の下生えをくぐって走るのに適応した結果だ。洋犬と和犬の両方を狩りに使う人いわく、洋犬は狩りの後眼に入ったゴミを取ってやるのが一苦労だが、和犬にはその必要がないと。

たぶん立ち耳や巻尾はヘテロでも発現する優勢な遺伝子により、和犬の引っ込んだ眼や柴犬の短い脚は劣勢遺伝子によるんだろう。

なお、和犬の間で交雑した犬は「和系雑種」と呼ばれる。

2016/06/08

国立医薬品食品衛生試験場

上用賀一丁目の国立医薬品食品衛生試験場は今年川崎市に移転する。跡地がどうなるかまだわからない。元は府中市に移転する予定だったが、市民が「住宅地の真ん中に危険なバイオ研究施設はいらない」とて反対運動した結果お流れになったそうだ。今の場所では病原微生物など扱わないが移転先ではできるようにするらしい。



敷地の西側は土手のような土の斜面になっていて、そこに様々な種類の桜が植えてある。ソメイヨシノ以外はまだほんの若木だが。

試験場正門斜向かいのローソンはまだフランチャイジーが決まらない。いい気味だ。場所も悪い。用賀七条と中町通りの交差点にあったファミマは遥かに好立地で客もよく入っていたのに経営者は十年目に契約を更新しなかった。跡はマイバスケットになってしまった。

2016/06/07

"Shiba scream"

柴犬が急なストレスまたは欲求不満により大きい金切り声をあげることを英語圏では "Shiba scream"という。もし街中でやられると周り中の通行人が振り返り窓が開き不審または非難の眼を飼い主に集注する……というのが以前海外のブログなどを読んで得た知識である。

うちの犬も若犬の頃そういうことが数回あった。犬を連れて砧公園に毎週行くようになったのは早くとも生後七ヶ月の頃だが、その帰りに家の前まで来た時近くを顔見知りの黒猫が走って通り過ぎた。すぐ近くの餌やりをする家に出入りする二匹の若い黒猫の片割れだが、さちはキャワワワワーンと自動車に脚でも轢かれたかのような絶叫を放った。遊びたかったに違いない。

もう一回はベルヴェットの待合室で、向かいに座った飼い主のコーギと遊びたがったが、向こうは「ダウン」「グッボーイ」などと言われておとなしくしており、こちらもリードを緩めなかったら鳴き喚きだした。その頃は獣医師を怖がるようになる前かすぐ後で、ふつうは待合室では平静にしていられた。

別の時はまだ一日三回給餌で、構ってやれない時は玄関の土間に置いた長辺 90cm のケージに入れていた頃だったが、お昼に宅配のピッツァが届き熱々の箱を捧げ持って昼食がまだな犬の前を素通りしようとした時だった。

成犬になって以降は全くそういうことはなくなった。