2017/01/18

Fail-Safe (1964)

1964年の米国モノクロTVドラマ。

中盤以降、物語はペンタゴンのある会議室、ホワイトハウスの地下シェルター、そしてネブラスカ州オマハの戦略航空軍司令部を主な舞台として進行する。

当時はロケット工学はソ連が米国を引き離しており、米国には核弾頭をソ連の中枢部まで届けることのできるロケットは存在せず、戦略爆撃機がこの任務に当たっていた。米国は推力の低いロケットで核弾頭だけでなく人工衛星や有人宇宙船を軌道に乗せる技術研究に注力し、のちにそれが宇宙開発で優位に立つのに役立つことになる。

オマハの防衛システムではソ連側から米国領に接近する未確認飛行物体(UFO)をレーダーが探知すると、報復攻撃のために常に水爆を抱えて飛行している戦略爆撃機編隊が「フェイルセーフポイント」に進入する。これは毎日変更される侵攻準備空域で、ソ連の国境に近く設定される。無害なものであると判れば定常飛行に戻る。大統領命令があってはじめて機械によって侵攻・爆撃を命ずるコードが発信される。しかしその日 UFO がエンジン不調と強風のためにコースを逸れた民間機と判明したとき、アンカレジを離陸した6機編隊が機械の誤作動によりモスクワを攻撃せよとの信号を受信してしまう。そのエラーの原因はソ連側が仕掛けた通信ジャミングだったらしい。編隊指揮官グレイディ大佐は何かの間違いに違いないと言いオマハに確認をとろうとしたが不可能なため、再度信号を受信後そのまま侵攻コースをとる。

編隊の異常な行動に気付いたオマハでは音声通信によって呼び戻そうとするがジャミングで通信不可能。大統領はペンタゴンに諮った上で最寄りの米軍戦闘機4機編隊にアフターバーナーを焚いて爆撃機に追いすがり撃墜せよと命令する。パイロット達は帰り道はツバでもって飛行機を飛ばすのかと冗談を言いつつ爆撃機を追うが、しかしミサイルは当たらず全機北極圏の海中に燃料切れで墜落する。

そうこうするうちに編隊は音声通信による命令を受けてよいとされるゾーンを出てしまう。敵側の謀略に惑わされないための規則だ。大統領は通訳と二人だけで地下深い一室にこもりホットラインによりソ連の書記長に状況を説明し、説得してジャミングを解除してもらうが、機長は規則に忠実に大統領からの直接の命令を無視し通信を切る。

国境でのソ連空軍による最初の迎撃は爆撃機が装備していた多数のデコイのために失敗し、5機が通り抜けてしまう。大統領は書記長に事後の交渉にあなたが必要だからと、直ちにモスクワを離れ安全な場所に退避してくれるよう頼む。結局書記長はそれに従いネフスキー元帥が指揮と対話を引き継ぐ。

この時点で多くの者がこの際総攻撃に出て冷戦にカタをつけてしまいたいと望んだろうが、それを口に出したのはペンタゴンの戦略会議に出席していた国際政治学者のグロテシェル教授とオマハのカシオ大佐だった。だがオマハの司令官ボーガン将軍やペンタゴンの会議に出席していたパイロット出身で大統領の学友であるブラック将軍は大統領に忠実だった。

大統領はブラック将軍に直ちに空軍基地に向かいそこで彼を待っている命令に従うよう要求し、またホワイトハウス・モスクワを含めオマハ・ペンタゴン・モスクワの米国大使館・ニューヨークの国連本部にいるソ連の国連大使を全て直接電話で繋がせると、爆撃機を落とすためにモスクワに協力し彼らの質問に何なりと答えるようオマハのボーガン将軍以下全員に厳命する。

ソ連側は爆撃機が装備している空対空ミサイルの誘導方式について質問し、カシオ大佐が答え渋るのでボーガン将軍は専門の下士官を呼び、躊躇するのを大声に叱咤し答えさせる。下士官はミサイルの起爆装置を電子的信号を使って自爆させる方法を伝える。これによりさらに数機が墜落したがなお水爆を積んだ隊長機を含む2機が生き残る。2機は高度を下げてレーダーから消えたので、さらにモスクワが2機の位置を聞いてくると、それに答えようとする将軍をカシオ大佐が殴り倒し、総攻撃の指揮をとろうとするが憲兵に拘束されてしまう。

そのうち水爆を積んでいない方の爆撃機がレーダーに姿を現す。ボーガン将軍はこれは囮だから決して構うなとモスクワに伝えるが、ネフスキー元帥はそれに最後の迎撃戦闘機群を向かわせ撃墜させてしまう。過ちに気付いた元帥は卒倒し、英語の話せるコーニェフ将軍がとって代わる。 そうこうする内に米国側はグレイディ大佐夫人を探し出して電話口でスタンバイさせる。決められた手順通り爆撃数分前に大佐が音声通信で報告を入れてきた時に彼らは夫人に大佐を説得させる。敵の攻撃をギリギリにかわしながら、大佐はかき口説く夫人の声に動揺し始めるが副機長が通信を切ってしまう。

やがて避難先の書記長から電話が入り、個人としてはこれは事故だと信じるものの報復用の核ミサイルをスタンバイさせてある、報復して欲しくないなら誠意の証明を欲しいと言う。答えて大統領はモスクワが攻撃されたら駐モスクワ大使の電話線が火球によって溶かされる時甲高い音が電話で聴かれる筈なので、それを確認次第現在ニューヨーク上空に待機させてある爆撃機に同数の水爆を落とさせる。それはあなたもソ連の国連大使の電話の騒音で確認できるだろう、それでいいだろうか、もしこの提案だけでこちらの誠意を分かってもらえればいいのだが、という。書記長はソ連の爆撃機がニューヨークに向かっていたら貴方はそういう提案だけで満足しますかと問い返し大統領は否定する。

やがてソ連の対空核ミサイルを使った迎撃の試みをも通り抜けたグレイディ大佐機はモスクワに20メガトン水爆を2個落とす。機長は敵の核ミサイルによる被曝で我々にはせいぜい二日の余命しかないといい、自らの核爆弾に巻き込まれる低高度を選択していた。攻撃を確認した大統領はニューヨーク上空のブラック将軍に爆撃命令を出す。同市には将軍の家族も大統領夫人も出かけてきており、両人ともにそれを知っていた。

完全版だと、爆撃直前に機長の息子が父を呼び出し、その日の朝二人だけの時に交わした他者の知りえない言葉を父に思い出させる。それでも爆撃を止めることはできなかった。

Fail Safe
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